高次脳機能障害
まず、脳の機能には、目や耳で感じた光や音を脳に伝えたり、脳から出た命令に従って手足を動かすなどの「一次機能」と、一次機能と連合して理解したり記憶したり、言葉で説明するなど、より高等な機能の「高次脳機能」とがあります。
交通事故による「脳外傷による高次脳機能障害」と呼ばれる障害は、脳の器質的損傷による障害であり、多彩な認知障害、行動障害および人格の変化が典型的な症状です。
認知障害とは?
記憶力障害、集中力障害、注意力障害などで、具体的には、新しいことを覚えられない、集中できない、計画して実行することが出来ないなどです。
行動障害とは?
複数の行動ができない、マナーやルールが守れない、適切な行動が出来ないまたは行動に抑制がきかないなどです。
人格の変化とは?
受傷前(事故前)にはみられなかった人格が現れることです。例えば、幼稚になった、自己中心的になった、病的に妬むようになったなどです。
また、この障害は、受傷後重篤な症状が発症しても、時間経過とともに軽減することも一般的であり、医師に見落とされたり、本人や家族もその症状に気付かなかったりしますので、見過ごされやすい障害という特徴もあります。
高次脳機能障害の等級認定
脳外傷による高次脳機能障害の等級認定にあたっては基本的に以下のような考え方とされています。
障害認定基準 | 補足的な考え方 | |
---|---|---|
別表第1 1級1号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの |
別表第1 2級1号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動をおこなうことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの |
別表第2 3級3号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの |
別表第2 5級2号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの |
別表第2 7級4号 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの |
別表第2 9級10号 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業維持力などに問題があるもの |